2011年8月11日木曜日

Hire slowly, fire quickly

スタンフォードMBAの最初の学期に、Managerial Skillという名の必修科目の授業がある。この授業は、たった4回の授業だったが、僕が取った1年目の授業のうち、最も印象に残った授業の一つだ。今日は、僕がこの授業で僕が学んだことを振り返ってみたい。

同コースでは、ビジネスリーダーが直面する重要な問題につき、(予め配布されたケースを前提に行うものの、)通常のケーススタディー形式ではなく、ロールプレイ形式(教授と生徒がケースの登場人物になりきり、議論を行う)で授業を進める。MBAと聞くと経営や財務に関する知識を学ぶ場所と考えられがちだが、実際は、近年トップMBAは、知識というよりは、リーダーシップ等のソフトスキルの教育により重点を置いている。スタンフォードでは、2年目に起業をテーマとしたリーダーシップの授業が数多くあるが、同コースは、1年生にそのエッセンスを経験させる目的で設けられたものだ。

僕のセクション(日本でいうクラス/組に相当)の担当はJoel Peterson。彼は、ハーバードビジネススクール卒業後、不動産開発会社に就職、CEOまで出世し、合計18年同社に勤めた。その後、Peterson PartnersというPEファンド(現在運用金額500億円)を設立し様々な 業種の会社に投資をしている。現在、複数の会社の取締役を務めており、また、JetBlue(全米第6位の航空会社。低価格で良質なサービスを提供する航空会社として有名)の会長も勤める。1992年からスタンフォードで教鞭をとっており、2005年にはDistinguished Teacher Awardを獲得している。娘さん7人(!)は全てスタンフォードの卒業生/生徒とのこと。一番下の娘さんは大学1年生で、第3回目の授業には見学に来ていた。

 

やはり、ビジネス界で大きな成功を収めた重鎮とあって、人間力は、アカデミズムで生きている学者教授陣とは比較にならない。第一回目の授業から完全に引き込まれてしまった。


 このコースにおける一番の学びは、(特に成長過程にある組織の)リーダーにとって、一緒に働くチームメンバーの選定がいかに重要かということ。Key Takeaway以下の通り。こうやって書き記すと何でもないように感じるが、授業中は、経験に基づき臨場感ある具体例に触れながら僕らに語りかける教授の一言一句に感動しながらとにかくメモを取りまくっていた。

1. 社員の採用

  • 採用はリーダーにとって最も重要な職務の一つだ。リーダーとしてのあなたの成功の可否は、採用を正しくできるか否かにかかっている。
  • 採用の際、自分の価値観を妥協してはいけない。
  • 採用は時間がかかるものだ。リーダーは一般的に考えられているよりも採用にもっと時間を割かなければならない。採用の重要性は本当に過小評価されている。
  • あるポジションを外の人材で埋める場合には、内部の候補者にはきちんとその背景を説明する必要がある。内部の候補者には理由を聞く権利がある。

2. 社員の解雇

  • 解雇は誰だって行いたくない。しかし、リーダーは心を鬼にして、組織のために決断をする必要がある。
  • 採用はゆっくり、解雇は即座に(Hire slowly, fire quickly)。望ましくない社員は、いるだけで会社の雰囲気を壊し周囲に悪影響を及ぼす。
  • もし望ましくない社員がいたら、その旨定期的にフィードバックを与えるべきだ。認識の不一致はお互いを不幸にする。


 僕にもいつか、リーダーとして自己の責任で社員を採用し、解雇するような場面が来るのだろうか。まだまだ長い自分探しの旅は続く。