2011年9月24日土曜日

PE Investment is Complexity Arbitrage

今年の2月に、巨大PEファンドBlackstoneのテクノロジーセクターのSenior Managing DirectorであるJohn Hodgeの話を聞く機会があった。彼の表題の発言(PE Investment is Complexity Arbitrage)は僕がStanfordに来てから聞いた最も印象に残る発言の一つだ。



同氏は、スタンフォード大学卒業後、複数の投資銀行渡り歩き、1998年から2005年の間はクレディ・スイスのテクノロジーグループのManaging Directorを勤めた元大物バンカーだ。スタートアップから大企業に至るまで250件を超えるテクノロジー関連企業のM&A/資金調達のアドバイザーを務めた。その後、2008年にBlackstoneに参画した。


興味深かった発言の要旨を、例によって、箇条書きの形式で共有したい。

  • MBAにいると、(その人気振りから)PE業界は既に確立された業界だと考えがちだが、PE業界はまだ30年ほどの歴史しかない若い業界だ。
  • 過去の業界の変遷は以下の3つのステージに分けることができる。
    1980
    年代:LBOの概念自体が新しく、コーポレートファイナンスに基づく緻密な分析(LBOモデルの構築等)でリターンを出せたステージ
    1990
    年代
    :LBOの概念が浸透し、それだけでは差別化が困難となり、リターンを生むには業界/ビジネスに対する深い理解が必須となったステージ
    2000
    年代:業界/ビジネスの理解だけでは差別化が困難となり、
    リターンを生むには買収後のオペレーションの改善が必要となったステージ
  • 買収後のオペレーション改善に関して、i) Blackstoneはスポンサー(PEファンド)による追加買収を極めて重要視しており、ii) Blackstoneのプロフェッショナルの約半数はオペレーションの経験を有している。
  • 今後のPE業界の展望としては、ファンドのスケール、ブランド力、そして追加買収の能力が他社との差別化要因となろう。
  • テクノロジー業界は、PEから過小評価されている。
    - 一つの事実として、テクノロジー業界は、S&Pの約20%を占めるのに対して、PE案件における占有度は10%程度である。
    - テクノロジー業界は、担保となる有形固定資産を有していないことも多く、貸出人はその資本コストを正確に理解していない。
  • 我々の仕事は、単に安く売って高く売ること(buy low, sell high)ではない。会社の戦略を変え、必要に応じて経営陣も刷新する。
  • 我々は複雑なディールを好む。ビジネスもキャピタルストラクチャーも、複雑なほどその見返りに高いリターンを望める。その意味で、PE投資は、複雑性の裁定取引とも言える
  • 会社/事業のパフォーマンスにとっては、経営陣が決定的に重要である。
    - 買収した会社の3分の2以上のケースで、経営陣を刷新する。
    - 経営陣に強いインセンティブを与えるため、上場企業に比して多額の報酬をキャッシュで与え、株主とインセンティブを整合させる。
    - 以前は経営陣の刷新により慎重だったが、今は迅速に決定する。
  • 上場企業の取締役会/経営陣にとっては、Fiduciary Dutyは余りにも複雑で恐ろしい
    - 上場企業の取締役会の約半分の時間は、Fiduciary Dutyに関する議論である。
    - 非上場化すれば、100%事業に専念できる。
  • 上場会社には、過度な規制の他にも、問題が少なからずある。
    - 例えば、上場したまま積極的にM&Aを繰り返すのは容易ではない。
    - PEが事業変革のために用いる戦略/戦術のうち3割程度は、上場企業ではできないものである。
  • PE業界では(典型的には投資銀行出身の)Deal Makerとしてのスキルの重要性は減ってきている。今後求められるのは、事業をバリューアップするスキルだ。


PE業界において、買収後に事業をバリューアップするスキルの重要性が特に指摘され始めたのは、リーマンショックによって案件上用いられるレバレッジ(≒借入金額)が限定的になって以降のように思う。

 僕は、日本でPE業界に移った際のファンドの選ぶ基準として、個々の人材のスキルはもちろん、firmの特性として買収後の経営変革能力に強みを有していることを重視し、今でもそれが(特に)日本におけるPEの差別化要因と考えているが、その仮説が大物PE投資家からも支持されたようで心強かった。

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