2011年10月6日木曜日

What do we need for sustainability?


 今日、Stanford大学School of Earth SciencesDeanである、Pamela Matsonの講演を聴講した。彼女は、自己の専門分野である、土地利用が生物化学プロセスを経て気候に及ぼす影響につき、農薬使用を例に説明してくれた。備忘録の意味もかねて、その概要を共有したい。


  • Sustainabilityの定義は様々あるが、私は、①現在/将来の人々の経済的なニーズを満たすことと、②大気、水、気候、エコシステムを保持すること、の2つを両立することだと考えている。 
  • 1950年から93年の間に、世界の人口は2.2倍になり、食糧生産は2.7倍になった。 
  • 食糧生産の増加は、主として農地開拓によるものであり、その結果、地球環境に悪影響を及ぼしている。 
  • 農地開拓に加えて、近年では、肥料の使用量の増加が大きな問題となっている。 
  • 私はメキシコのYaqui Valleyで詳細な調査を行ったが、肥料の過度の使用による窒素の増加が、温暖化ガスの発生に大きく寄与している。 
  • なぜ不要なほど大量の肥料を用いるのか、当初はとても不思議に思っていたが、調べてみると、Credit Unionが自己の貸し出し金額を増やすために、農家に多くの肥料を買うようアドバイスする、という構造的な問題があることを発見した。このような視点は、純粋な研究者からは出てこないものであり、問題解決のためには、分野を超えた専門家が知識を結集する必要があることを痛感した。
  • なお、中国は、今後国民の食料ニーズを満たすためには、食糧生産を2倍にする必要があるが、生産性を高めるために、肥料の使用量を過度に増やしている。 
  • 我々が行った調査によると、中国は、肥料の増加に依存しなくとも生産性を高めることは可能だが、米国と異なり零細農家が運営しているという構造から、農家の意思決定に影響を与えることは難しい。 
  • これらの経験を踏まえ、今後、世界のSustainability実現のために我々が必要なことは下記の3つに集約されると思う。

    1. 異なる分野の専門家が協力し、異なる知識、ツール、アプローチを総動員すること 
    2. 知識を行動に移すこと 
    3. リーダー及び国民が問題を正確に認識すること

 
 近年、欧米を中心に「インパクト・インベスティング(Impact Investing)」という投資手法が注目を集めている。Stanfordの同級生からも、就職先として興味があるという話を聞くことがある。Impact Investingとは、経済的な利益を追求すると同時に、社会的/環境に関する課題に対する解決を図る投資のことだ。Pamela Matsonが上げた上記3点のうち1つ目の点は、環境問題の解決に、このような、従来の慣習にとらわれない、クリエイティブなソリューションが求められているということをまさに示しているのだと思う。