2012年1月10日火曜日

新しい経営陣だったら何をするか?

先学期のStrategy Managementの授業でインテルのケースを取り扱った。



インテルは言うまでもなく、マイクロプロセッサ(CPU。パソコンのコンピュータ内で基本的な演算処理を行う、いわばコンピュータの心臓部に当たる半導体チップ)でグローバルで約8割の市場シェアを有する超優良企業だ。

しかし、インテルはもともとは、マイクロプロセッサではなく、半導体メモリーの会社であった。フェアチャイルド・セミコンダクター社出身のロバート・ノイス、ゴードン・ムーアとアンディ・グローブが1968年にインテルを設立した。1970年代、インテルはメモリーチップの有力企業として順調に成長していった。

しかし、1980年代になると、インテルの前に、日本の半導体企業が強力なライバルとして出現した。 日本製のメモリーはアメリカ製のものより不良品率が低く、何より、価格が圧倒的に低かった。瞬く間に、日本の半導体企業はインテルからシェアを奪っていった。他方で、マイクロプロセッサの売上げは急激に増加していた。

このような状況の下、インテルは、1985年、ついにメモリー事業から撤退し、それまでノンコアビジネスであったマイクロプロセッサ部門に経営リソースを集中した。

授業で取り扱ったのは、メモリー会社として設立され、未だメモリー事業が社内の主流派を占めている会社において、どのようにマイクロプロセッサ重視への転換を図ったかという点。この点を議論した取締役会において、アンディ・グローブはこう言った。

「もし我々が、過去のしがらみなどまったくなく、インテルの新たな経営陣として今日職に就いたら、我々はどのように行動するか?答えは明らかだろう。極めて困難な意思決定であることは承知だ。しかし、正しいことをしようじゃないか。」

その後、インテルは、「Intel Inside」の標語を用いた最終消費者への直接広告キャンペーンやライセンスの非供与等の施策等により、単なるPCの部品メーカから、PCの心臓部を作り出す強力な企業へと発展した。IBM等のコンピュータ・メーカーを業界の主役から引きずり下ろし、自らの覇権を確立した。

イ ンテルが撤退したメモリー・ビジネスのその後は、日本人であれば知っているであろう。低価格の製品を提供する韓国(サムスン)、台湾メーカーが市場を席巻 し、日本半導体産業は凋落した(ただ、最近では東芝がフラッシュ・メモリーでサムスンに僅差の2位につけており、健闘している)。



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上記のような、いわゆる「ゼロベースで考える」という手法は事業以外でも役に立つように思う。

先学期のInvestmentの授業にゲストとしてきた最大手のヘッジファンドの創業者である大物投資家が、「投資家は、自己の保有する株式を、今の価格で買うかどうか毎日判断すべきだ。過去に買ったから持ち続けているのではなく、その時点その時点で魅力的な価格だと思うから保有していることを強く認識すべきだ。もしそうでないなら、すぐに投資から身を引き、キャッシュに変えるべきだ。」 と言っていたのを思い出した。これも、慣性にとらわれるのではなく、「ゼロベースで考える」ことの一例であるように思う。

事業や投資以外でも、このような考えは有用であろう。様々な状況に適用できる考え方のツールとして、自分の引き出しにしまっておきたい。



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