2012年2月23日木曜日

Investors' Circle

インパクト・インベストメント(Impact Investment)の分野で積極的に活動している組織の一つにInvestors' Circleがある。Investors' Circleは、約150のエンジェル投資家、ベンチャー・キャピタリスト、財団、ファミリー・オフィスからなるネットワークで、主としてVenture Fairというconferenceを通じて、投資家と社会起業家を結びつけ、社会起業家に忍耐強い資金(Patient Capital)を提供することをミッションとしている。Investors' Circleは、1992年以来、合計200以上の企業に対する総額100億円以上($134million)の投資の手助けをしてきた。



Investors' Circleが、IC Fellowshipという、社会起業やImpact Investingに興味のあるMBAの学生にビジネスプランを精査する機会を提供するプログラムを運営しているという話を聞いた僕は、反射的に同Fellowshipに申し込み、幸運にもクリーンテック担当のFellow(IC Venture Fellow)に選任された。

IC Venture Fellowの仕事は、15社程度のビジネスプランを精査し、この春にサンフランシスコで開催されるInvestors' Circleの一大イベント、Venture Fairに招待すべきかどうかの推薦を行うこと。IC Venture Fellowの推薦は、起業家の資金調達の可否に大きな影響を与えるのみではなく、そのフィードバックは直接起業家に伝わるため、その責任は重大だ。そのため、選考も厳格に行われたようで、皆、投資あるいは社会起業に関する経験・知見を持った学生が選ばれたようだ。

僕にとっては、現実のスタートアップのビジネスプランを精査し、分析し、投資に関する推薦をするという経験が初めてのものだったため(自身の投資のキャリアでは成熟した企業の分析がほとんどだった)、極めて新鮮で、かつ興味深い経験をすることができた。よく、「ベンチャー投資は、新しいアイデアの宝庫で新しいもの/テクノロジー好きにはたまらない」という話を聞くことがあるが、数多くの斬新/奇抜な(?)アイデア/技術に直に触れてみて、その言葉の意味がよくわかった。また、(そもそもある程度スクリーニングされたスタートアップだからという理由もあるだろうが)経営陣のレベルの高さにも驚いた。クリーンテックは特に技術の重要性が高い分野であるが、ほとんどのスタートアップがPh.D./業界のエクスパートと経営プロフェッショナル(何度も起業経験のある、いわゆるserial entrepreneur等)の組み合わせの経営陣であった。


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インパクト・インベスティング(Impact Investing)というと、マイクロファイナンス等の国際開発関連の投資が想起されることが多い。しかし、Investors' Circleでは、より広義に社会的Impactを定義しており、たとえば、カーシェアリングのZip Carも、環境に優しいビジネスモデルとして、以前にInvestors' Circleを介して投資を受けている。

エンジェル投資家、ベンチャー・キャピタルによる資金提供及び豊富な起業家の存在というエコシステムが米国ほど発達していない日本では、Investors' Circleのモデルをそのまま移植することは難しいだろう。しかし、クリーンテック、教育等のスタートアップにおいては、より忍耐強い資金(Patient Capital)が必要とされるという事情は日本でも同様である。

(広義の)社会起業家を支援するこのような仕組みを実際に経験してみて、日本への示唆について考えずにはいられなかった。





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